『阿修羅城の瞳』


阿修羅城の瞳
映画版(2005) & 舞台版(2003)
ツインパック


演劇と映画を比較することが、そもそもナンセンス。ではあるが、元々の新★感線の舞台がビジュアル志向の映画的な演出が持ち味だったわけで、本作の変遷は当然の事だったのかもしれないし、幸せな事であったのだと思う。
ビデオで演劇を見る場合、収録時のカメラ構図が立体的になる事が違和感の源泉となることが多いのだが、先の理由から、むしろ映画と演劇の中間にある、面白い表現になっていると思う。カメラ台数も、異常に多いみたいだし。
上演時間三時間という大作なわけだが、中だるみが無い展開はお見事。だが、映画版より多い登場人物それぞれに細かいキャラクター造詣が施されており、ちょっとてんこ盛りが過ぎる感が無きにしも非ず。
個人的には、多少説明不足ではあるもののスピード感というところで、映画版の方が好みに合う。演劇は演劇で、生々しい迫力というのは捨てがたい魅力ではあるのだが。宝塚OG天海祐の美しさと迫力は、文字通り鬼気迫るものがある。この天海に、染五郎以上に真っ向ぶつかる芝居をしているのは、美惨役の夏木マリ。語尾をソプラノで延ばし、ビブラートを利かせと、貫禄を見せ付けてくれる。こういうのが嬉しいね。