『コープス・ブライド』

チョコレート工場より罪の無い、王道のバートン映画。
ルーブル2@有楽町。

ティム・バートン監督久しぶりのアニメーション作品だったわけだが、肩も凝らず、底意地の悪さや無意識の悪意も無い、ピュアなロマコメ映画であったよ。プロットだけなぞれば、本格ゴシックホラーロマンな気もするが、正しく「俺節」を利かせた監督の手腕に拍手を送りたい。
生者の生きる世界が、生彩に欠けるモノトーン調で描かれることに対し、色と音と笑いにあふれる死者の世界の対比はベタだが面白い。主人公に纏わり付くしがらみは、その源を生の謳歌ではなく死の忌避に置いているように見受けられ、「メメント・モリ」が本作のテーマであるとしかつめらしく言うことも可能であろう。生きること≒自己の存在の肯定は、他者への理解と愛無くしてはありえない事を体現した、主人公ビクターとエミリーは、十三世紀ヨーロッパの神学者達より雄弁であったといえるかもしれない。ラストでエミリーが成仏するのはご愛嬌として、だ。

ティム・バートンのコープスブライド 特別版

ちなみに余談だが、キャスティングで面白い事を発見。コープスブライド≒エミリー役のヘレナ・ボナム・カーターと、その元婚約者ケツ顎のバーキス卿役のリチャード・E・グラントは、『十二夜』(1996年 監督:トレヴァー・ナン)でも競演しているのだな。ヘレナ・ボナム・カーターは、両親をなくしたがその全ての遺産を手に入れた地方領主の娘オリビア役、リチャード・Eは、その遺産を狙う叔父と結託するバカ貴族アンドリュー卿役である。想い人には振られるが、思わぬ形で夫を手に入れるリビアと、想い人には振られた挙句えらい目にあうアンドリュー卿と、役どころまで一緒なのであった。バートンがしかけたいたずらなのか?