カツ丼セット

丸屋@恵比寿。

カレーうどんが食いたくてしょうがなかったのだがアテが外れたところで目に留まった「カツ丼セット」の文字に惹かれて入ってみる。カツ丼も久しく口にしていなかったから、スイッチングは瞬間であった。開いてるんだか開いていないんだか判らない、寂れた雰囲気の店構え。昭和で時の止まった趣の、正しい街の蕎麦屋の内装。割と俺好みのエアポケット系の店である。
オーダーして暫し。出てきたのは、普通にたぬき蕎麦だった。かけ蕎麦くらいの気持ちでいたので、ちょっと得した気分。テーブルの上には鶉の卵が置いてあり、自由に割りいれて良い仕様になっている。ので、一個入れてみる。蕎麦は更科系で、なかなか美味い。カボスの皮が一剥き浮いており、手繰ってる間は良い香りが漂う趣向。

暫くしてカツ丼が登場。丼はやや小振りだが、カツがはみ出ている!歓待料理としての尾頭付きや丸焼きは、「正真正銘この通りの肉でございます」という、ごまかしの無さ=誠実さをアピールする意味合いがあるというが、ソレに近いものがあるな。カツ丼のカツは丼に収めるという物理的な事情から、六分割くらいにして一切れ引くものである。副次的な効用として、五枚のカツから六人分のカツ丼が作れるわけだ。*1が、ここのは、ストロングに一枚入れてるのね。はみ出たカツの見た目も力強いが、切り方が。。。。3分割だよ!Σ(゜ω゜*) 。男前といえばそうだが、食いにくい(w。玉子も半熟部分は流れてしまった模様で、嬉しいやら寂しいやら。
蕎麦の上品さに比してカツ丼の品の無さの取り合わせに、渋い着流しの老人と話し込んでいたら、印半纏に尻っ端折りの鳶衆がご隠居を迎えに来たというシチュエーションを想像してしまったよ。

*1:と、蕎麦屋に好意的な説が主流だが、実際は逆だと思う。更に言うなら蕎麦屋のカツは、薄切り肉を三枚位重ねて一枚のカツとして供するのがクラシカルなスタイル。肉南蛮、カレー当の肉と共用の材料として使えるように考えていたのだ。洋食屋に押されていた明治時代の蕎麦屋が思案した、今日にも通用するコスト圧縮の知恵の名残なのだと俺は思う。