『剛神―大江戸超神秘帖』

原作:滝沢一穂
作画:近藤ゆたか
出版:チクマ秀版社

剛神―大江戸超神秘帖
知る人ぞ知る、まさに埋もれた名作が書き足しを加えて堂々復刻された。かれこれ10年近く前になるかなぁ。バンダイコミックス版「剛神」を初めてを読んだ時の衝撃は、忘れられない。当時の友人に早速「「ウルトラセブン」と「ミラーマン」と「大江戸捜査網」と「必殺からくり人」と「天下堂々」を足して5で割らないスゴいマンガがある!!」と無理矢理読ませたなぁ。返ってきた感想は「ホントだ。。。。」と。
特撮ヒーローと時代劇を愛してやまないヒトたちが、その情熱と才能の全てを注ぎ込んだ、愛と夢とロマンの結晶が本作である。
近藤ゆたか氏の、独特な力強いタッチ*1、滝沢氏のコロンブスの卵的な史観とSFマインドのバランスが絶妙なコンビネーションなのだ。

人類が---まだ太陽系内に六つの惑星と十の衛星しか知らなかった頃
日本人がまだ古代の動物の化石を竜の骨と信じていた頃
人口百万を誇る江戸は---地球最大の都市であった!
そして大江戸八百八町は狙われていた!!
四段目エンディングナレーションより

これが、剛神の世界である。これに燃える人とは、深い付き合いが出来そうな気がする。
また、言語センスも素晴らしい。ディテールに拘るが故に外来語は全てオランダ語を使用しており、それがまた新鮮。「星夷」とか蘭学攘夷隊」といった造語センスも抜群。登場人物の名前も、剛神こと捨天連京四郎*2を始め、飛縁魔のお蝶、しょうけらの溪楽、賽河渡呂兵衛といった攘夷隊の面々*3のネーミングセンスのカッチョ良さといったらない。
そして何より、お江戸の護り神「剛神」の威容が素晴らしい。強いて言えばウルトラマンが僧兵になったという感じか?オマージュはオマージュとして消化しながら、オリジナリティ溢れ、かつ、作品世界を象徴する一度見たら忘れられないデザインである。剛神は、頭部、胸部、肩をプロテクターで覆っているのだが、これ、実は使役怪獣。事ある時には、三匹の怪獣は剛神の身体を離れカプセル怪獣以上の活躍を見せ付けてくれる。剛神の「喰えッ!ベパアレル」という号令は一生忘れられない。
まぁそういうわけで、何ゆえ今この時期に「剛神」が復刻されたかといえば、『仮面ライダー響鬼』関連ということなのだろう。誰が見たって、剛神の発展形だもんなぁ、鬼のデザインとか、ディスクアニマルの描き方って。。。。。。でも、デザインワーク他キャストに近藤氏はクレジットされたないんだよなぁ。俺は近藤氏のファンであるので憶測発言は避けるが、なんとなくきな臭い。詳細知っている方、情報求む。


*1:現在の氏の絵と見比べてみると、10年前のこの作品で既にして絵柄を完成させていたのだね。

*2:すてれんきょうしろう。オランダ語と日本語を合成した、望遠鏡を意味するステレン鏡のもじりであるが、真っ先に落語の「てれすこ」を思い浮かべ、ニヤリとしてしまった覚えがある。極楽蜻蛉の辻占という表の顔のイメージにも即したダブルミーニングであると思いたい。

*3:旗本のボンボンで下っ端の輝之進が二つ名を手に入れる件は、『新・必殺仕置人』最終回へのさりげないオマージュとなっていて秀逸。