『オペレッタ狸御殿』

Mazudai2005-05-29

平和で罪の無い内容こそがアヴァンギャルドな、嫌な渡世

新宿オスカーにて、公開2日目。

公開直前のプロモーションが始まるまで全くノーマークだったのだが、鈴木清順監督の新作ではないか!というわけで観てきたわけだ。

これも劇場でプログラム見るまで知らなかったのだが、脚本は浦沢義男ではないか。この二人の組み合わせは『美少女仮面ポワトリン*1以来(w。01年の『ピストルオペラ』は伊藤和典が脚本だったし、つくずく、コッチ方面のリスペクトが多いなぁと思っていたら、浦沢さんって、大和屋竺に師事してたんだね。納得。また、浦沢脚本の「破壊力」についても、妙に納得できてしまった。

さて、映画自体は、まずまずの出来栄えかと。清順監督作にしてはテンポがちょっと悪いかな?とは思うものの、昔日の「狸御殿モノ」へのオマージュと断言して作っているのだから、文句を言う筋ではない。そして、猫も杓子もCGの時代に、木村威夫の職人美術はアンチテーゼに成りうるか?という期待は、良い意味で裏切られているかも。木村氏は今回、スーパーバイザーとして参画。木村節をみごとにCGでやってしまっているのだな。便利な道具はホイホイ使う、真の職人の仕事を見せられてしまったわけだ。

怪人俳優*2平幹次郎の「濃い」演技は、例によって例の如し。安土桃山なるナルシストの暴君役なのだが、物語の初っ端にいきなり歌付きで現れる!!冒頭に「踏み絵」があるのは、ある意味親切かもしれない。これがダメな人は、さっさと帰って下さいという(w。

平幹次郎の怪演に対して、燻し銀の貫禄を見せてくれたのは、由紀さおり。彼女が演じる、安土桃山配下の妖婆びるぜん婆は、どうにも憎めないキュートな婆さん。『ドリフの大爆笑』の頃から、コメディエンヌとしての才能はあったのだが、上手いね。狸姫の乳母兼摂政である萩の局との戦いに敗れ、その命を散らす直前に、朗々とマイソングを歌い上げていくのだ。死をイメージさせないという脚本と演出の意図を先に考えるならば、由紀のキャスティングは必然だったかもしれない。

びるぜん婆を討ち取る萩の局を演じるのは、薬師丸ひろ子。狸の中の人は狸という洒落っ気が、無いとは言えないキャスティングだが、キャリアの長さは流石なもの。相変わらずのたどたどしい声質ながら、決め所はビシっっと決まっていた。実にカッコ良かったのは、びるぜん婆と対決する前のやり取り。子殺しを厭わぬ業こそ人の本質とうそぶかんびるぜん婆に対し、その業がはた迷惑となじるお萩。僅かな会話のやり取りで、双方一切相容れることは無い事を見るものに理解させた上での、

びるぜん「行くぞ!物の怪」
お萩の局「来い!人でなし」

のセリフはシビレタなぁ。

チャン・ツィイー演じる狸姫は唐の国から渡って来たという設定。だから日本語喋れませんというセンスは素敵だが、苦笑。唐から渡ってくるのは狐*3ではなかったか?なんか、ちょっと太った感じがしないでもないが、清順映画の大きな魅力である、ビビッドな色彩感覚が横溢する絵面には、ぴったりのキャスティングだった。

オダギリジョーは。。。。なんかなぁ。若様役ってのは、あんなもんなんだろうけどね。逆に自己主張を抑えたところが、本作でのオダギリのGJなのかもしれない。


*1:清順監督は、氏神様の役で俳優として参加。

*2:怪人を演じる俳優ではなく、怪人が俳優をやっている。

*3:金毛九尾の狐だね^^b