『オペレッタ狸御殿』
平和で罪の無い内容こそがアヴァンギャルドな、嫌な渡世
新宿オスカーにて、公開2日目。
公開直前のプロモーションが始まるまで全くノーマークだったのだが、鈴木清順監督の新作ではないか!というわけで観てきたわけだ。
これも劇場でプログラム見るまで知らなかったのだが、脚本は浦沢義男ではないか。この二人の組み合わせは『美少女仮面ポワトリン』*1以来(w。01年の『ピストルオペラ』は伊藤和典が脚本だったし、つくずく、コッチ方面のリスペクトが多いなぁと思っていたら、浦沢さんって、大和屋竺に師事してたんだね。納得。また、浦沢脚本の「破壊力」についても、妙に納得できてしまった。
さて、映画自体は、まずまずの出来栄えかと。清順監督作にしてはテンポがちょっと悪いかな?とは思うものの、昔日の「狸御殿モノ」へのオマージュと断言して作っているのだから、文句を言う筋ではない。そして、猫も杓子もCGの時代に、木村威夫の職人美術はアンチテーゼに成りうるか?という期待は、良い意味で裏切られているかも。木村氏は今回、スーパーバイザーとして参画。木村節をみごとにCGでやってしまっているのだな。便利な道具はホイホイ使う、真の職人の仕事を見せられてしまったわけだ。
怪人俳優*2平幹次郎の「濃い」演技は、例によって例の如し。安土桃山なるナルシストの暴君役なのだが、物語の初っ端にいきなり歌付きで現れる!!冒頭に「踏み絵」があるのは、ある意味親切かもしれない。これがダメな人は、さっさと帰って下さいという(w。
平幹次郎の怪演に対して、燻し銀の貫禄を見せてくれたのは、由紀さおり。彼女が演じる、安土桃山配下の妖婆びるぜん婆は、どうにも憎めないキュートな婆さん。『ドリフの大爆笑』の頃から、コメディエンヌとしての才能はあったのだが、上手いね。狸姫の乳母兼摂政である萩の局との戦いに敗れ、その命を散らす直前に、朗々とマイソングを歌い上げていくのだ。死をイメージさせないという脚本と演出の意図を先に考えるならば、由紀のキャスティングは必然だったかもしれない。
びるぜん「行くぞ!物の怪」
お萩の局「来い!人でなし」
のセリフはシビレタなぁ。
チャン・ツィイー演じる狸姫は唐の国から渡って来たという設定。だから日本語喋れませんというセンスは素敵だが、苦笑。唐から渡ってくるのは狐*3ではなかったか?なんか、ちょっと太った感じがしないでもないが、清順映画の大きな魅力である、ビビッドな色彩感覚が横溢する絵面には、ぴったりのキャスティングだった。
オダギリジョーは。。。。なんかなぁ。若様役ってのは、あんなもんなんだろうけどね。逆に自己主張を抑えたところが、本作でのオダギリのGJなのかもしれない。