『乱歩地獄』

乱歩地獄
デラックス版

浅野忠信おなかいっぱいということで公開時は見に行かなかったのだが、なんだかんだで実相寺作品は手元において置きたいとおもい、amazonで購入したのが昨日ついた。
さて。。。。実相寺監督の『鏡地獄』は、とり・みきのコミカライズ*1を先に読んでしまっていた。ロートルヲタクの悪ノリ感濃厚なマンガだったが、映画がこれとビタ一変わらない内容で、ちょっとのけぞってしまう。実相寺監督の最高傑作のひとつ『呪いの壺』のパスティーシュめいた映像だった。
『芋虫』はまぁよくやった部類に入るのだろうが。。。。。傷痍軍人を扱う以上、徹底的にあの時代を再現するか、あるいは近未来の設定に置き換えない限り、なにをやっても低予算ゆえ、アヴァンギャルドに走った監督の自己弁護作品にしかなりえない。松田龍平の使い方もあざとすぎる。


面白かったのは『蟲』。カネコアツシのマンガは読んだことがないのだが、画面構成や演出が玄人はだし。レトロモダニズムヘのオマージュを濃厚に漂わす前半部から、打って変わっての虚構性濃密なパラダイスのイメージ、そして、リアルな現代の風景と、乱歩的なるものを十分に理解し租借したうえで、演出プランを練っているところが素晴らしい。主人公のキャラクター造詣に精神性のアレルギーを持ち込んだのはアイデア賞。原作の持つ焦燥感を、わかり易くビジュアライズした手腕に拍手を送りたい。また、精神病の行き着く果ての更に先を描き、ある種スラップスティックめいた演出を施したことも、本アンソロジー参加作家の中でも抜きん出た才能を感じさせた。

*1:劇場公開時のパンフに書き起こされた作品を、最新短編集『パシパエーの宴』に収録。それで読んだのだが、コチラはちゃんと明智岸田森の顔をしていたりする。