『妖星ゴラス』

妖星ゴラス
通しで観るのは、実に三十年ぶりな気がする。つとに有名な挿入歌「おいら宇宙のパイロット」や怪獣マグマの腰砕けな印象が強く、改めて観直す気はサラサラ無かった三十年だったのだ。が、『デンキネコ 日本列島改造計画』を観たり、山本弘氏の『トンデモ本?違う、SFだ! RETURNS』で本作を取り上げている文章を目にして、「これは買っておいてイイかな?」という気になってしまったのだ。

セット含む特撮に思いの外金を掛けてるので、ちょっとビックリ。南極に展開する一大SFパノラマは、レトロフューチャーな雰囲気とあいまって、昔日の職人芸特撮を堪能させてくれる。

またドラマ面では、テンポやセリフ回しは古臭いものの、第二次ゴラス観測に向った久保明の描写は、なんとなく『トップガン』を髣髴とさせる。若さ故の傲慢さ/使命感/恋の悩みといった個人の要素を、危機的状況において際立たせる演出の発想は先駆的であるかもしれない。特攻隊の記憶も新しかった時代においてミーイズムに焦点を置くというのは、すごく斬新な事なのではないだろうか?

そういう意味では、個VS社会の構図での葛藤をもって旨としてきた東宝特撮映画のドラマ性のなかでも、異端の輝きを感じる。さらに、久保明はゴラスの引力圏から九死に一生を得て脱出したものの、恐怖のあまり記憶を失う。この辺の等身大のリアリティというのも、なんとも今日的な展開であり、かなりビックリした。
マグマは『ウルトラQ』のトドラに流用され、国連の垂直離着陸機は『ウルトラマン』のジェットビートルに流用されている話は有名だけど、スパイダーショットの原型も『妖星ゴラス』に出ていたって俺が知らないだけか?鳳号の乗組員が使う、個人用姿勢制御装置なんだが。