横浜で過ごす

横浜美術館で開催中のルーブル展を見に行くも、みなとみらい駅で1:30待ちの告知が。たまった代休を消化し、平日に出直そうと即断する。
当初目的を逸したからといって、別に困ることは無い。なんたって横浜だ。5年前まで住んでいた地域だ。里帰り気分で、市外を散歩する方針へ切り替える。
まずは腹ごしらえ。みなとみらい地区を突っ切って、野毛に出る。久しぶりに三陽で餃子を食おう、あ、万里のチャーハン餃子セットも捨てがたい。。。と逡巡すること数分。いいや、両方食っちゃえ!と即断。一人フードバトル決行である。バトルの結果は、後ほど。
野毛の三陽で餃子2枚+白乾児を食し、関内伊勢崎モールへ向かう。本日は仮装パレードがあるとかで、モールえらい人手。人ごみを縫って有麟堂裏の万里でチャーハン餃子。
万里を出て、しばしパレード見物。今までの人生で、海外旅行と仕事以外カメラを持ち歩く習慣が無かったが、今はカメラ付き携帯がある。持ってりゃ使うのが人情というもの。携帯デジカメでパチパチ写真を撮る。有志、プロ問わずダンサーのお姉さんたち、弾けていて美しい。地元各高校、大学のブラバンやバトン部のドリルが対照的に初々しくて微笑ましい。。。。のだが、関東学院「宗右衛門町ブルース」のマーチアレンジはどうかと思うぞ。横浜関係ないし(w。
感心したのは、ボーイスカウトの横浜支部の行進。イギリス陸軍で斥候(scout)を勤めていたベーデン・パウエル卿が、軍隊生活のノウハウを教育に転じようと思い立った事が起源のボーイスカウト。マーチドリルは本領だよなぁ。旗手が複雑に位置を入れ替えながら、全く足取りが乱れることなく進められる行進は、非常に高レベル。沿道で真横から見ているから逆に、その難易度の高さだけが素人目にも伺えるが、上から見たら、おそらく万華鏡を覗いているかのような、美しい幾何学的軌跡を見ることができるのだろう。
小一時間立ちっぱなしで疲れたので、文明堂ル・カフェにてアイスコーヒー。俺の知っている範囲で、TOP3に入る美味いコーヒーを飲ませる店だ。ブレンドの具合が、心地よいまろやかな苦味と、豆の甘みを強調した俺好みのもの。ここのアイスコーヒーは、コーヒーを凍らせたアイスキューブを使っている。氷が解けても薄まらないから、味が変わらないのだ。こういう心遣いが施されているコーヒーというのは、日本では文明堂だけではないか?
通りから奥まった店内の座り心地の良いソファに腰掛け、パレードの喧騒を聞いていると、眠気が襲ってくる(w。カフェインを退かせるリラクゼーション。あぁ、良いなあ。横浜。
ル・カフェを出て、モールと並行する裏道を下っていく。アジア系の飲食店や、近在のアジア人の為の食品雑貨店(昔は、店頭で複数台のビデオデッキをフル稼働させて海賊版ビデオ作ってたりした)がずらりと並ぶ、異空間。わずか10m弱のパレードの喧騒が、やけに遠くに聞こえる。10分少々歩いて、目的の場所へ到着。先ごろ閉館した、横浜日劇と、ジャック&ベティである。

横浜日劇は、『探偵濱マイク』の舞台としてロケに使われた事で有名だが、純粋な二番館である。俺が住んでいた頃は、ロードショーから2ヶ月くらいのラグしかない新しい映画しか掛かっていなかったので、一度も足を運んだことが無かった。だが、何がしかのノスタルジーは感じてしまう。ポスタースペースにはびっしりと、80年代の映画のポスターが貼られていた。閉館時に、残っていたものを使い切った「死に化粧」なのであろう。

ジャック&ベティは、そもそも店構えが映画館っぽくない、小洒落た演劇スペースのようだった。だけに、入り口を硬くシャッターで閉ざされ、看板のネオンをはがされてしまうと、もう本当に見る影も無い。こちらには良く通ったなぁ。単館系の二番館といわゆる名画座をそれぞれ「ジャック」と「ベティ」が分担していた。どっちがどっちだったか失念したが。市川雷蔵特集には、会社辞めた直後のニート期間に通いつめたなぁ。『ムトゥ 踊るマハラジャ』は休憩告知の画面を上映しながらも、ぶっ続けで上映えらい疲れたもんだ。

再びモールへ足を向けると、丁度、崎陽軒のパレードに出くわした。あれはなんというのか?バンジョーとか使うアメリカ民謡風にアレンジされた「青い目の人形」にのって、ブロンドのセルロイド人形や日本人形の仮装をした美女・美少女たちが、ティン・トイをイメージした装飾のパレードカーの上で踊っている。「人形のように可愛らしい」女の子を「人形化」するという発想。それが蒼天の元、元気に楽しげに踊っている様は、なにやら白昼夢的である。
いろいろな感情が綯交ぜになったノスタルジーというものを満喫できた一日だった。考えてみれば、「里帰り」の感覚というのはこういうものなのかなぁ。実家が埼玉の俺にとっては、初めての経験だった。