『レーン最後の事件』


レーン最後の事件
エラリー・クイーン , 鮎川 信夫

おすすめ平均
誰のためのペーシェンス(忍耐)か?
今でも叫びそうになる
必ず前3作を読みましょう。

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ふっと、『最後の悲劇』ってどんなんだっけ?と思ったら、気になって仕方がなくなり、25年ぶりに再読。
犯人だけは覚えてたんだけどね、ストーリーや展開をまるで忘れていた。
エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義で執筆。聴覚障害により現役を退いたシェイクスピア俳優「ドルリー・レーン」が探偵を務めるシリーズの最終作である。
『Xの悲劇』は、状況と凶器から犯人を割り出す、パズラー色の強い本格。『Yの悲劇』は、横溝正史のある作品を想起させる、本格推理の金字塔にしてゴシックホラーの傑作。『Zの悲劇』は、サスペンス色の濃い展開が読後に心地よいカタルシスをもたらすと、バリエーションに富んだシリーズである。
本作は、日常派とも思われる小さな謎を発端に、細かな謎が積み上げられて驚愕の真相に至る、職人的な構成の本格推理である。謎は、シェイクスピア研究に大きな影響を与える新資料を巡って渦を巻く。
レーンのパートナーであるサム元・警部が受けた、「虹髭の男」の不可思議な依頼を発端に、奇妙な稀覯本窃盗・交換事件、相次ぐ失踪事件と波紋は広がっていくのだ。
俺は、犯人を知っている状態で読んでいたので、謎解きに関してはあまり楽しめなかった。だが、真相に至るまでの構成の巧みさやトリックの奇抜さには感動を覚えた。さらに、全4部作を通じての構成の妙にも肌が粟立ってしまった。もし、本作を読もうと思った人がいたならば、これは絶対に『X』『Y』『Z』、そして本作という順番に読まなくてはいけない。先にも述べた先3作のバリエーションこそ、本作の結末へ向けた周到な複線なのだから。







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