『ウルトラQ dark fantasy』第12話「夢みる石」

【闇の】キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!!!【ファンタジー

放映データ
話数放映日サブタイトル脚本監督
1204/06/22夢みる石太田愛鶴田法男
キャスト
キャラクター俳優キャラクター俳優
坂本剛一袴田吉彦楠木涼遠藤久美子
田中美奈子洋平池田恭祐
マツボン野上清信ウツギ諏訪太郎
ナレーション佐野史郎


普通の街に住む普通の小学生、洋平とマツボン。彼らの住む街に隕石が落ち、怪しげな男が移り住んだその日から、街の様子がどうもおかしい。集会といっては、夜な夜な大人たちが街外れに集まりなにやら密談しているのだ。ある日の深夜、ついに大人達は隕石を中心に妙な儀式を始める。そこには洋平の最愛の母親(田中美奈子)の姿も・・・!?剛一の記憶によると、古代の巨石信仰を思わせるその儀式。共同体の夢を実現化させるための祈りらしいが・・・。それでは果たして参加者の大人全員に共通する夢とは何なのか?SFタッチで少年の日の冒険を描いた、詩情豊かなファンタジー

コメント:ウルトラQ~dark fantasy~case6
深夜枠で、非常に良くできたジュブナイルSFをやられてしまった。太田愛さんらしいリリカルなストーリーを、鶴田法男監督が、これでもか!と言わんばかりの恐ろしい映像に仕立ててくれている。コレだよ、こういうコラボを期待していたんだよ、俺は。
実を言うと、先週予告をみて「今度は『光る眼』*1かよ!」とダルーな気持ちになっていたのだが、あぁ、先走ったコト言わないで良かった。
今回のエピソードの功労賞として特筆しておきたいのはロケハンをしたスタッフだと思う。なんの変哲もない地方の町並なれど昭和の空気が濃厚で、かつ、21世紀のさびを感じさせる商店街や、現実とアンバランスゾーンを繋ぐトンネルなど、全体の雰囲気を決定する演出上重要な空間を、セットや特撮に一切頼らないで構築したんだもんな。しかも、実社会で機能している生活空間の転用だ。ロケ撮影で異界を描いたと言えば「楽園行き」が思い出されるが、こちらの方がずっと厳しい選定作業だったと思われる。まずは、お疲れ様でした。
そして、最低限のメイクとカメラアングルだけで、子供を怪物として描いた鶴田監督の手腕に拍手。田中美奈子が少女に返った「赤頭巾ちゃん」の怖さと言ったら無い。「遊ぼう」と誘いながら袴田を追い詰める少女の口元のアップは、同時にクライマックスへ向かう重要な複線にもなっていた。洋平少年が自分と年の変わらぬ少女を母親の変じた姿だと見抜く「艶黒子」というキービジュアルの生かし方たるや。
更に、少女という「怪物」と化した母は、母子の絆...母が息子の名を刺繍したハンカチ...を踏みにじって襲い掛かる。洋平少年の心中の恐怖と絶望を察すると、身をかきむしりたくなる。なんて非道な絵面*2を創りやがるんだ、鶴田監督!!
無論、テーマと構成のしっかりした脚本を書いた、太田愛さんの力量を忘れているわけではない。「奪われた母を取り戻す」婉曲なエディプスコンプレクス*3がテーマと見せかけたストーリーに、見事な一捻りを加えてくれているのだから。
諏訪太郎*4演じる「ウツギ」は、父の不在に甘言を弄し母親を籠絡する間男のメタファであり、口からの触手は、ビジュアルイメージからして露骨に「快楽としてのSEX」のイメージだ。触手から、夢を現実にするキャンディを生み出すというアイデアが、これを裏打ちしている。つまり、エディプスコンプレクスとして捉えた場合、洋平にとってのウツギは、父...母の所有者...を凌駕する敵なのだ。
だが先に述べたハンカチのシーンにより、母の愛は完全に消失している事を洋平は悟っている。恋敵への圧倒的な敗北だ。だが、恐怖と絶望を打ち払い、ウツギに戦いを挑み止めを刺す洋平の行動原理は、エンクミ...性を意識させる(得る)女性...を助ける事に転化されているのだ!つまり、「夢みる石」は、エディプスコンプレックスをテーマにしたSFおとぎ話ではなく、正常な性意識の目覚め、少年から男へ成長するイニシエーションの物語だったと、大ドンデン返しが仕掛けられていたわけだ。ラストで、「あれは夢だったんだよ」と母を諭す洋平の姿の、なんと逞しい事か。凄ェぜ、太田愛
さらに、「ウツギ」は結局何だったのか?何が目的だったのか?が明かされないままクロージングを迎えて、『ウルトラQ』や『ウルトラマン』のスタイルを正しく継承しているところも、憎い構成である。
そろそろシリーズも折り返しを迎えるわけだが、後半、このクォリティが続いてくれる事を祈る。

*1:ジョン・ウィンダムの古典SF『呪われた村』原題:"The Midwich Cuckoos"。2度映画化されており、タイトルはどちらも邦題は『光る眼』で原題は"Village of the Damned"。1960年 監督:ウォルフ・リラ/1995年 監督:ジョン・カーペンター また、楳図かずお先生の『おろち』の1エピソード「ふるさと」が、ウォルフ・リラ版に多大な影響を受けている...ちゅうか、原作・映画2作と比べても「ふるさと」が一番面白かったりする。今回のエピソードにも若干の影響が見られるが、どれからなんだろうね?

*2:血の一滴も流さずに。ホラー畑の鶴田監督への最大級の褒め言葉のつもりである。為念。

*3:「ジム・ボタンと機関車エマ」とか、オリジナル「新造人間キャシャーン」が思い浮かぶが、「龍の子太郎」が源流なんだろうな、多分。

*4:『血を吸う宇宙』(2001年 監督:佐々木浩久)での、あの役のインパクトがスゴ過ぎて、つい笑っちゃうンだよなぁ。