田村高廣さん

訃報:田村高廣さん77歳=俳優、阪東妻三郎の長男

田村高廣さん 日本映画の大スター、阪妻こと阪東妻三郎さんの長男で、知性派俳優として数多くの映画やテレビドラマで活躍した田村高廣(たむら・たかひろ)さん(77)が16日に脳こうそくで亡くなっていたことがわかった。親族や関係者らで密葬を済ませた。お別れの会を開くが日時は未定。自宅は非公表。連絡先は田村事務所(03・3380・0033)。喪主は長男潔(きよし)さん。

 同志社大卒業後、商社に勤めていたが、父の急死を機に松竹に入社、54年木下恵介監督の映画「女の園」でデビューした。「二十四の瞳」「笛吹川」「喜びも悲しみも幾歳月」など木下作品をはじめ「京洛五人男」「張込み」「背徳のメス」などに出演した。阪妻2世と注目されながら、豪快な父とは異なった現代人の内面を繊細に演じる演技派として評価された。

 63年、松竹から独立、65年、勝新太郎主演の「兵隊やくざ」でインテリ上等兵を好演しシリーズ化され、ブルーリボン助演男優賞を受賞。以降、演技に重厚さが加わり、名脇役として活躍した。81年「泥の河」で毎日映画コンクール男優演技賞、88年「イタズ」で芸術選奨文部大臣賞。

 弟で、阪東妻三郎さんの三男正和さん、四男亮さんも俳優。

七十七歳はまだ若いなぁ。『必殺仕掛人』の神谷兵十郎、『本陣殺人事件』の一柳賢蔵 *1と、心に底知れぬ闇を湛えたニヒリストを演じる一方、『助け人走る』の中山文十郎のような飄々としたキャラクターや、『仕掛人 藤枝梅安*2の彦次郎のような燻し銀のプロフェッショナル、『喪服のランデブー』の老刑事など、今日的なピカレスクが印象深く、実に上手い人だった。
そう、今日的というのがキーワードである。印象に残る役は殆ど時代劇であるが、そのキャラクター造詣は人類普遍のこそがキモであり、そこに、緻密な演技と、そして何より役者家族に生まれて自然に身についたであろう1を漂わす事ができた俳優なのだった。
謹んでご冥福をお祈りします。


*1:1975年ATG作品。監督:高林陽一

*2:小林桂樹の梅安の相方。池波正太郎をして「あいつぁ、江戸だね」と言わしめたという名演技だった。