佐々木守氏死去

訃報:佐々木守さん69歳=シナリオライター
 佐々木守さん69歳(ささき・まもる=シナリオライター)24日、内臓疾患のため死去。葬儀は近親者だけで行う。告別式は3月1日午前11時、石川県小松市西町96の称名寺。自宅は非公表。喪主は妻直子(なおこ)さん。

 石川県出身。大島渚監督のもとで助監督を務め、映画「日本春歌考」「絞死刑」などの脚本を執筆。テレビドラマ「ウルトラマン」「七人の刑事」「コメットさん」「柔道一直線」「アルプスの少女ハイジ」などの脚本も手掛けた。著書に「ウルトラマンを作った男たち」がある。

毎日新聞 2006年2月26日 18時46分

享年69.まだまだ早いなぁ。社会派というか、国家や社会への反骨を差別という観点から、時代の息吹をダイナミックに捉えた作風で世に送り出してきた硬骨漢とのイメージが強い。慣れ親しんだ「ウルトラマン」/「ウルトラセブン」における実相寺昭雄監督とのタッグは言うには及ばず、「アイアンキング」や「シルバー仮面」での子供置き去りのテーマ性やドラマ性は、今日ある俺たち「大きなお友達」への素晴らしい贈り物であったといえるかもしれない。その作風は早坂暁と双璧をなす。が、アプローチの仕方は間逆であったと思う。
必殺シリーズを例にすると、島抜けした罪人が旅芸人を装おう早坂氏の「からくり人」シリーズが、主人公たちを含め常に弱者の視点であったのに対し、佐々木氏の創出した「必殺仕置人」における錠、鉄、主水らは、自らの存在意義をかけて逞しく活きる強靭なバイタリティを持っていた。
この差は、佐々木氏に弾圧者側の論理を描かざるをえなかった、ウルトラマンアイアンキングの経験があったればこそであろう。今そこで、倒壊した建物の下敷きになり助けを求める女や老人に、「うるせぇ!おれは忙しいんだ!」と恫喝する静弦太郎や、仕置きの顛末を頼み人に見せつける初期仕置人の姿は忘れえない。愛だの優しさだのを実践するのは生半な事ではない。綺麗事では誰をも救いえないのだというテーゼを、21世紀日本に活きる未必の差別者である我々は、佐々木氏の作品を通じて再度、認識し直さなくてはいけないのではなかろうか。
どうにも説教臭いが、心から、氏の業績を称え、ご冥福をお祈りしたい。