『ヴィドック』(原題:"Vidocq" 監督:ピトフ)
昨夜のテレ東深夜の放映を録画。字幕放映。
ヴィドック ― 2枚組 DTSプレミアム エディション
|
のっけっから、ジェラール・ドパデュー演じる名探偵ヴィドック*1対鏡仮面の怪人のバトル。当然ヴィドックはスタントなのだが、なんだか、『燃えよ!デブゴン』を思い出してしまったよ。デブのスピーディーなアクションって、なんかイイよな。と思った途端に名探偵ヴィドックは、鏡仮面に、炎燃え盛る井戸*2に落とされてしまう。
物語は、ヴィドックの伝記を執筆しようとする作家が、ヴィドックの死を持って未解決に終わった事件を追う事で、関係者の回想と交互して進められていく。時は1830年。政情不安なパリで、落雷による焼死が相次ぐ。これが、事故ではなく計画的な殺人事件であるとヴィドックは看破していたのだ。科学と論理*3を以って不可能犯罪を暴いていくヴィドックの姿を描く前半の展開は、ゴシック版『怪奇大作戦』といった印象を受ける。だが、ストーリーの進行に従ってドラマの様相は、古式ゆかしい「探偵小説」の味わいを濃くしていく。過去を舞台にしながらも現代の知識を無理なく導入する、アプローチとしてはハードSF的な試みを行っていたのだが、段々「?」が増えていき、クライマックスでは「んなアホな」というどんでん返しが待っているのだ。例えとしては適切ではないかもしれないが、押川春流や海野十三のつもりで読んでいたら、香山滋だったという感じを受けた。
本作は『フロム・ヘル』との対比で、『マーズアタック』と『ID4』の関係が思い出される。どちら先か*4は、まぁ、どうでもイイ。だが、面白さの点でも、映画としての出来栄えとしても、『フロム・ヘル』より本作の方が優れていると断言できる。
美術や衣装の作りこみ*5が桁違いに良くできているし、画面構成も実に絵画的で美しい。それでいて、通俗性もまた上回っているのだ。賢ぶったバカと、プロの道化、どちらに好印象を抱くか?という違いと言って良いのかもしれない。
『ジェヴォーダンの獣』*6もそうだが、この手のって、フランス映画の方が面白くなってきているようだ。