『大神』

ゲーム誌で画面写真見たときから悩殺されてしまっていたのだが、いやはや、素晴らしいゲーム。

筆書きのタッチを強調したメリハリの利いた輪郭に、水彩タッチの微妙なグラデーションをかけたカラーリングが素晴らしい。切り絵と水墨画と水彩画を一緒にしたような、アナログっぽいインパクトでありながら、デジタルでなくては不可能なグラフィックのセンスがスゴイのであった。トゥーンシェーディングもこういう使い方ができるのだなぁ。

自キャラは狼なのだが、移動を続けていると三段階でスピードアップする。走ったりジャンプしたりすると足元にサァーっと草が伸び花が咲く*1のだが、スピードが上がるにつれ、緑から黄色と暖色系の色合いになっていく。ジャンプでは赤系にまで発展する。つまり、大地を蹴る力の強さが、花の彩で表現されているのだな。もうもう、その爽快感や美しさたるや、思わず目頭が熱くなる出来栄え。

「筆しらべ」と呼ばれる、ゲーム内に自分で線を書き込むフィーチャーがキモなわけだが、アナログジョイスティックを上手く使ったアイデア。他にもそういうゲームはあったかと思うが、チュートリアルも含めた全体のバランシングが絶妙。戦闘中も「筆しらべ」を使うのだが、使い分けを直感的に行えるアサインで、按配良し。そしてその表現は、毛筆の柔らかくも力強い筆致が生かされており、すごい気持ちいいのだ。力強くだの伸びやかにだの言っても、実際半紙に筆で線を描けば、往々にして紙を突き破ってしまうわけで、リアルでは味わえない爽快感をデジタルで表現されているところが、なんとも皮肉である。

PS2の仇花的なタイミングでリリースされてしまったのは開発者には気の毒だが、今年一番の良質ゲームであるような気がする。




*1:もののけ姫』のダイダラボッチ鹿バージョンの描写が、スピードとパワーを表現するためにブラッシュアップされたと思えばよろしい。