ベルギー印象派展@東急文化村

クノップフを生で見たくて馳せ参じるも、今回は「愛撫」が出展されてない。残念。
耽美的な作風で、ベルギー印象派の顔(日本では)的なポジションにあるフェルナン・クノップフは、描く女性の殆どが、妹マルグリットをモデルにしている。秀でた額に四角く張った顎の線が特徴的な顔立ち((ジョン・クリースの女装っちゅうか、『乙女の祈り』のヒロインちゅうか。。。。あ、同じだ(笑)))であるが、実は、クノップフ本人にも良く似ているのである。兄妹だから当たり前って言えばそれまでだが、自分とそっくりな妹への執着は、近親相姦願望のみならずナルシシズムの香りも濃厚である。二重に歪なデカダンス。その象徴的な作品が、今回の出展漏れだった「愛撫」なのだった。
が、未完の大作「妖精の女王」などが見られたのはよかった。また、ブリュージュの風景画など、なんともいえない寂寥感と非現実感の漂う作品を眼にすることができたのも、幸運だったかもしれない。クノップフの風景画の筆致は、背筋が寒くなるなりよ。
また、クノップフが師事したグザビエ・メルリの作品も印象的であった。背景に金とか使っていて、金属光沢が実に微妙な退廃感を醸し出している。なんだか、日本の屏風画みたいな印象なのだな。きっと、クリムトなんかにも、間接的に影響を及ぼしているのであろう。
他、ブラヴァツキー夫人と親交があって、神智学の影響をモロに受けてしまったトンデモ画家ジャン・デルヴィルや、黒いパワーで、ハート鷲づかみにされてしまったレオン・スピリアールトなど、今で存在すら知らなかった画家の作品に触れることができた事も、良かった。スピリアートの「雲」というのが、大胆な構図で、かつ、現在の写真芸術に通じる感性がほとばしっており、肌が粟立つほどにインパクトがあったよ。
同じくスピリアートの、「七人の黒衣の女」というのが印象深い。もしかして、市川崑監督「黒い十人の女」って、この絵にインスパイアされてるのか?とか思ったりした。
そういえば、今回初めて、有料の音声解説というのを使ってみたが、中々良かったぞ。1回500円。多分、クリエを使っているようだ。PDA程度の大きさと重さなので、装着してても苦にならない。タッチパネルで解説番号を入力すると音声ファイルが再生される仕組みで、年寄りにも使い勝手が良いかもだ。幸い今回は空いていたものの、混雑する企画の場合、解説のパネルを精読できない場合も多かろうし、そういう時にはすごく便利だと思う。